2013年12月22日日曜日

せまい店



10年以上前に定期的に出演していた店のはなし。

その店は毎晩ジャズの演奏がありいくつかのレギュラー・グループが曜日指定で出演していた。
店のマスターが古くからやっているベーシストで、レギュラー・バンドのうちいくつかは本人がベースも弾いていた(残念ながら楽器歴と技術は比例していなかったけど)。

そのマスターの演奏は「4次元」といわれていた。あまりにもすばらしく、というわけではなく、ソロになると拍もリズムもむちゃくちゃになってメンバー全員、元の場所に帰ってくるのが困難だからだ。

おいらが初めてその店に行ったのはレギュラーのピアノが来られなくなり急なことでピアノのトラもみつからなかったので仕方なくギターで、という理由だった。

店はせまく、ウナギの寝床のように奥に長いつくり。ピアノは当然アップライト。演奏場所は人間二人分くらいの幅で奥に長い。楽器もっていると二人はならべない。立ち位置に迷っているとドラムのひとにいわれた。

「この店はマスターがいちばん偉いからベースが一番前。奥にドラムを置くとトイレのドアが開かないからドラムはベースの後ろ。君(ギター)は一番後ろで弾いて」

「・・・・・」
うーん、縦一列で弾くというのは初めてだ。やってみると勝手がちがうせいかミス連発でしたテヘペロ。なんかかっこわるいし。立ち位置というのは重要だと痛感したよ。

1セット目が終わって休憩のときマスターが話しかけてきた。

「(ミュージシャンでは)誰が好きなの?」
「パット・マルティーノですけど」

ちょっとマスターの年齢ではマルティーノは新しいようで(そうかなあ?)、

「いや、ちがう、古い人では誰?」
「えーと、ケニー・バレルです」
「へえ、キミね、もっとウェスを聴いたほうがいいよ」

こんな感じで教えてやる的に言ってきた。あとでわかったのだけどベーシスト対してはポール・チェンバースとレイ・ブラウン、ドラマーに対してはフィリ・ジョーとマックス・ローチを使い分けて相手の答えの逆を「もっと聴いたほうがいい」といっていたそうだ。

ジャズをやる人間はとにかくおしえたがるやつ、知ったかぶる人が多い。おいらも一時期そうなりかけたし。

2セット目はイスをもってきて座って弾いた。すると終わってから、

「おまえなあ、演歌の伴奏じゃねえんだぞ。なに座って弾いてんだよ」
といわれた。

ウェスはいつも座って弾いていたんだがなあ・・・・
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