2014年4月30日水曜日

天は二物を

15年くらい前だっけ、ピアソラがブームになり始めたころ、友人に「ピアソラって、作曲家としてすごいの、演奏家としてすごいの?」ときいたら、「どっちもすごい人なんだよ」という回答だった。

 演奏も作曲もどちらもすごい人って、なかなかいない。クラシックは完全に分業だと思うし、ロックはどちらも井の中の蛙だし。あ、何度も言ってるけど、おいらはロックは大好きだからね。

ジャズとなると、そもそもプレイをすることが命である音楽であり、どうしても「演奏家としてすごい」ひとだらけになってしまう。

いや、当然作曲もいいのですよ。ビル・エバンスの晩年の作品なんかどれもこれも涙モノでしょ。でも、エバンスの名声はそこにあるのではなく、60年代のトリオでの演奏が評価されているからこそ。ちなみにおいらは70年代以降のエバンスこそ最高だと思っているんだけど。

ウェイン・ショーターだって独特の個性的な作曲をするけど、彼の名声は作曲家としてではない。つまり、ジャズにおいてはまずプレイヤーとしての評価があり、「彼の作曲もいいよね」というように、作曲は付随的に評価されるにすぎない。

ミンガスは演奏のほうはすばらしいのだけどベーシストの中で特にぬきんでているというわけではないし、モンクについては演奏は個性的だけど技術的には評価できない。

ジャズにおいて作曲を専業にしているひとはかなり少ないし。

それでも作曲も演奏もどちらも同じように高く評価されているひとはいないか考えてみた。すると・・・

いましたね、パット・メセニーとジャコ・パストリアス。 パットなんかその曲の美しさでけっこうファンが増えたよね。ライルがいないと崩壊するといううわさもあるけど。
ジャコは80年までだけど文句なし。

まあどちらもフュージョンのひとなのだけど、メインストリームのプレイヤーにそういうひとはいないだろうか。

と思っていたら、ハンコックやコリアなんかはそうだね、作曲も演奏もすごい。なんだ、探せばけっこういるな。

え、「ハンコックとコリアはジャズじゃない」?



↓よろしければ投票してください!

音楽(ジャズ) ブログランキングへ

2014年4月29日火曜日

ロン・カーター 11



ロン・カーターの代名詞といえば、ずれた音程とはったり的なグリッサンド(スライド、ポルタメント)だろう。

後者のほうはアンプを使うようになってからだと思われがちなんだけど、実はBNのころからやっているのだ。

ところでこのアルバム。

Concierto 
説明不要の有名盤だよね。ロン参加。

タイトル曲で音程がずれてるのはいまさら言及するまでもないが、1曲目のYOU'D BE SO NICE TO COME HOME TO、冒頭いきなり例の調子でベースがグリッサンドする。さすがであるw ロンでなきゃできない。
みんなが素晴らしいソロをとる。いよいよロンの番だ。いい感じでやってるがとちゅうでよくわからなくなるのはおいらだけじゃないだろう。リズム的にかわったことをしようとして逆に自分がはまってしまったというよくあるパターンにきこえる。
アマチュアのバンドならここで修復不可能に陥るのだけどさすがに一流メンバーたち、難なく戻る。ロン、救われたな。

ジム・ホールつながりでこれ

Alone Together 
これも超有名。
もう、ロン・カーターっぷりが全開ですよ~
バッキングとの区別がつかないソロ(?)、ハッタリフレーズしか弾いてないのににソロ終了時に出てくる客席からの拍手、なんの工夫もなく鈍重に弾くリフ、などなど。

ここまでボロクソにいってしまったけどね、ここでのセント・トーマスのリハモによる単純化は素晴らしい。おそらくジム・ホールではなくロンの考えだとおもう。ぜひ聴いてみてください。
 



↓よろしければ投票してください!

音楽(ジャズ) ブログランキングへ

2014年4月28日月曜日

頭がかたすぎるピアニストの話



昔、Dさんというピアノがいて、ベースのソロならテンポがミディアム以下の4ビートの曲に限るという考えをもっていた。特に、ボサノヴァ曲ではベース・ソロと4バースはしないという固い信念(?)をもっていて、そういう曲では絶対にソロをベースとドラムにまわさなかった。

そんなころ、有名ボーカルの伴奏の仕事があり、最初の2曲をバンドでやるという段取りだった。たしか6人くらいのバンドでおいらとDさんもメンバーだった。

曲はたしかリコーダ・ミーかブルー・ボッサだったとおもうけど、ペット(Sさん)、ギター(おいら)、ピアノ(Dさん)という順番でソロをとった。ペットのSさんとおいらはピアノのあとベース(Fくん)がソロをとるものだとおもっていたんだけど、ピアノのDさんは「ベースのソロなんかとんでもない」と考えていてペットがリフに戻るのを待ちながら弾いていた。
ベースのFくんがまだ若いため、Dさんとしてはあまり好きではなかったのも理由のひとつかもしれない。
ペットのSさんはリフにもどるのはまだまだ先だとおもってステージ横にひっこんでしまっている。
Dさんはベースに回すべきでないと考えているからずっとソロをとっている。
当時のおいらは大ベテランのDさんに意見を言える立場ではないので「ベースにまわして」ともいえず、ましてやSさんの手前、おいらが強引にリフに戻るわけにもいかずひたすらバッキングをしていた。
かなり長くDさんがソロを弾いたが、それでもSさんがでてこないのでついに観念してベースにソロをふった。不自然で、異常を感じるくらいの長さだった。

おいらはDさんの頭の固さにうんざりした。ベースでもドラムでもなんでもいいじゃん。

若い別のベーシストが「ベースラインをコードの3度から始める場合もある」みたいなことを雑談のなかで言ったことがあり、そのときDさんは軽蔑した目つきで彼をみて「最低だ」と吐き捨てていた。

ある日、ミンガスの79年のアルバム(これ)みたいに2ベース&3ドラムで何かやろうみたいな話がでた。

ミー、マイセルフ・アン・アイ 

 Dさんはおいらたちを軽蔑するようにみて「そんなものは音楽じゃない」と一蹴した。

うーん、おいらたちがやるというのはともかくとしてもミンガスのこのアルバムとこれは最高にすばらしいとおもうのだけど。


サムシング・ライク・ア・バード


↓よろしければ投票してください!

音楽(ジャズ) ブログランキングへ

2014年4月27日日曜日

ローランド・カークの「溢れ出る涙」



ローランド・カークの最高傑作といわれる、「溢れ出る涙」。

溢れ出る涙

カークのアルバムをいくつか聴くと、特にこれが優れているわけではないという気がするが。

おいらとしてはこっちのほうが好きだ。モントルーのライブ。

ライヴ・アット・モントルー 1972

まあ、「溢れ出る涙」は評価が高いだけあって、確かによいアルバムだ。初心者にも楽しく聴けるだろう。というか、カークの写真を見るとキワモノっぽく思えることもあり初心者は敬遠するかもしれないが、いい意味で普通の音楽、すごい才能の爆発なんだけど「詩人にしか理解できない」という種類の音楽ではないので安心して聴いてもらいたい。

「溢れ出る涙」収録の「Many Blessings」という曲なんか最高だ。テーマメロディはセロニアス・モンクの作曲かと思うような感じで、ソロに入ったとたん、カークが循環呼吸で延々と、コルトレーンばりのシーツ・オブ・サウンドを吹きまくる。
カークの循環呼吸は弱くなる瞬間がない、一般的な手法とは違う独特のやり方をしているのかな。

この曲にはいわゆるコルトレーン・チェンジの部分がある。「Have You Met Miss Jones?」のサビといえばそれまでなんだけど。いずれにしろジャズファンなら一度聴いてみるべきだろう。

ところで、循環呼吸ができる知人のサックス奏者が「必然性がなければ循環呼吸なんて単なる一発芸だ。なぜ循環呼吸をする必要があるのか、その理由が伝わる演奏をしなければならない」といっていた。そうか、ギタリストには循環呼吸は関係ないが、フレーズを延々と続けるにしても必然性が求められるということだな。
 

 

↓よろしければ投票してください!

音楽(ジャズ) ブログランキングへ