2014年2月24日月曜日

「逃げ」のトランペッター



昔のはなし。

おいらが若造のころ仕事で知り合ったトランペットがいた。Dさんという。
Dさんに会ったのはそのときが初めて。印象をひとことでいうと「態度がものすごく悪い」。
おいらより5つくらい年上だったとおもうけど、何をするにもかっこつけていておいらに対しても「おまえ譜面読めるのか、大丈夫かよ、ガキ」みたいなことを言ってきた。

Dさんは中学だか高校だかで吹奏楽をやってきたことが言葉の端々からうかがえた。
まあ若い時から譜面に慣れていると読譜も得意なのだろう(しかし「ビッグバンドのこういうところが嫌い」でも書いたがなぜ吹奏楽あがりはこんなんばかりなんだろう)。

さて、メンバーがそろったのでリハをすることになった。
おいらは参加しない曲も多かったのでバンドのうしろのほうを歩いたりしていた。
なんとなくDさんの後ろにいて譜面をのぞきながら聴いていたら、なんと高い音があるとフレーズ単位でオクターブ下げて吹いている!ほかのフレーズはちゃんとした高さで吹いているので、聴いていると明らかにおかしい。盛り上がらない。しかもペットだからそれが目立つ。高い音、といってもGとかAとかそれほど高くない、むしろ普通の音域だ。

おいおいおい、驚きを通り越して笑ってしまった。威張っていたのにこの程度かよ。
しかも読譜が得意かとおもいきや少しでもシンコペーション(しかもごく簡単なやつ)がでてくるだけで彼だけずれる。リズムがまったく読めてない。本人は読めているつもりなのだろうが。まわりを聴いていれば自分がずれたことがわかりそうなものだがおそらく聴いていてもそういうセンスがないのだろう。

トランペットが数小節アドリブをする部分があったのだが、できてないわけではないがフレーズがジャズじゃない。おいらはそれを聴いてわかった。この人はそもそも吹奏楽からきているからジャズが好きというわけでもないのだろう。単にラッパが吹ければ満足でジャズらしさをだそうなどという意識はないのだ。

休憩のときにおもいきって言ってみた。

「Dさん、オクターブ下げてますよね」
「ペットやってないやつは知らないだろうが高い音出すのは大変なんだよ!」

あきれたようにおいらにこう言い放った。でもな、Aはそもそも普通の音域だぞ。それといわせてもらうが、楽器ってのはみんな大変だ。
楽器によって大変なところはちがうけどみんなそれなりに大変なんだ。
弦楽器のおいらにいわせてもらうと、手元を見なくても演奏に集中できる管楽器なのになぜ譜面がそんなに読めないんだといいたいね。

そんなこんなでまたリハを開始したのだがペットのソロの部分がどうもしまりがない。
トランペットってこんなんじゃないだろ・・・とおもってよくみたら!

なんとDさんが吹いているのはフリューゲルだった。
おいらも若造だったせいかすぐに気付かなかったよ。

「な、なんでフリューゲルなんですか!?」
「ん?だってペットより音出しやすいから」

なんとDさんはトランペットの仕事がきても何食わぬ顔でフリューゲルを持って行ってるのであった。トランペット持っているかどうかも怪しかったな。

古いトランぺッターにはもちろんこんな人はいないけどね、最近このてのひとをみかけることが多くなった。
いっちゃあ悪いけどジャズやっててフリューゲルって、逃げでしょ。フレディ・ハバードとかみたいに持ち替えならわからなくはないけど、「ジャズ」をやるのにトランペットじゃなくてフリューゲルなんてことあるか?プロでもそれは逃げなんじゃないかと思ってますよ、おいらは。

ところでアート・ファーマーのフランペット、覚えている人いるかな?w


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