2014年3月3日月曜日

マイルス・デイビスの「Milestones」



いわずとしれた、マイルスの大名盤だ。


マイルストーンズ

以前
にも少し触れたけど、コルトレーンとキャノンボールが参加している。このアルバムは、とにかくとんでもないアルバムだ。ハードバップの限界と、新しい世界の片鱗が同居している。と思う。

1曲目は超絶スピードのブルースなんだけど、マイルスのソロはそこそこに、コルトレーンとキャノンボールの1コーラス交換に突入する。これがこのテイクの山場だね。
ちなみに4小節交換を「フォーバース」といったりもするけど、「バース」を「交換」の意味だと勘違いして「1コーラス・バース」とかいうひとがいる。間違ってるよ~バースは「小節」という意味だからね。

2曲目は、初めて世間にモードが登場した曲だ。いまいちモードの解釈も作曲も中途半端で、完全に実験的テイクになっているけど。
一説によればピアノのガーランドがマイルスとケンカして帰ったため、マイルスがソロの合間にピアノを弾いている。しかし、ガーランドは元ボクサー、マイルスもボクシング習っていたでしょ。ケンカって殴り合いにならなかったのかな。
ケンカでなく用事があって、という説もあり真相はわからないけど、とにかくマイルスがつたないピアノを弾いているテイクというのは事実です。

3曲目はこれまたブルースの2ベース・ヒット。ここではトレーンとキャノンボールのみソロをとる。もう、マイルスはこういうところこそ「やりたい放題」だ。だってリーダーなのにソロとらないんですよ。ただ単にバリバリ吹きまくるのとはわけが違う。

そして4曲目がマイルストーンズ。キャノンボールの歌心あふれるソロが聴かれ、それを「モードをわかっていない」と評論家がとんちんかんな批評をしたものだ。おいらは大いに反論するが、百歩譲ってモードがわかっていないとしてそれがなんなのだろう。
このテイクを聴けば百人が百人キャノンボールを素晴らしいプレイヤーだと思うだろう。権威主義者にはそれがわからんのだろうな。

ちなみにこのタイトルチューン、どうやら正式には単に「マイルス」というらしい。ジャケットの曲名が記載されているところにも「マイルス」と書いてある。マイルストーンズというのはアルバムタイトルだけらしいな・・・もっとも後年の別のアルバムでは「マイルストーンズ」とクレジットされているから最終的にはそのタイトルになったのだろうけどさ、この初めての発表時にはそうではなかったと考えられる。

5曲目は、なんとピアノトリオでの演奏。マイルスはリフすら吹いていない。すごいよね、自分のアルバムで。
日野皓正氏が自分のアルバムの解説で「マイルスがマイルストーンズで、ピアノトリオの曲を収録したでしょ。あれがかっこいいからボクもこの曲でテーマを吹かずにソロだけを吹くことにした」といっているのがあるんだけど、それって別にテーマをピアノにやらせただけで、珍しくもないし、マイルスの精神とまったく違うと思う。だいいち、「ホーンが参加している場合は必ずホーンがテーマを演奏する」という間違った意識があるから、たかだかピアノにテーマをやらせただけですごいことのように思うのではないだろうか。

6曲目はまたブルース。曲はストレート・ノー・チェイサーだ。よく考えるとブルースだらけのアルバムだね。2曲目もブルースではないけど12小節だし。
ここでは、ガーランドがブロックコードで、なんとチャーリー・パーカーのバンドで録音したときのマイルスのソロフレーズをそっくりそのままなぞっている。これはなんなのだろう?
おいらはこのときのマイルスのフレーズ大好きだからいいんだけど、マイルスにしてみれば修行時代のソロのフレーズ。ガーランドのこれは、偉大なるマイルスへのオマージュなのか、嫌がらせなのか。

ということで、マイルスのソロは4曲でしか聴かれず、そのうち2曲においてはトレーンとキャノンボールが主役で、タイトルチューンでは図らずもキャノンボールが目立っているというアルバム。ただ、これこそマイルスが作りたかったアルバムなのだと思う。

すべてテオ・マセロのアイデアだって?いやあ、違うでしょ~

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