2014年11月13日木曜日

書評:ジャコ・パストリアス(エレクトリック・ベースの神様が遺してくれたもの)






まず、本についている帯に4人のミュージシャンによる短いコメントが書いてある。
スティービー・ワンダー、フリー(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)、ジェフ・ベック、スティングだ。おいおいジャズ系じゃないじゃんと一瞬おもったがよく考えるとジャズ側の人間に対してはいまさらジャコを紹介しなくてもみんな知っている(とおもう)。あえて他のジャンルの有名どころの名前をだしてそっち系の層を取り込もうとするのであればかしこい選択だなとおもった。

ミュージシャンの本のお約束である冒頭のスナップ写真はいままでみたことのないやつがかなりあって新鮮であった。著者の松下佳男氏が提供の写真も多い。松下氏のジャコ関係の本や記事は「どうだ~、おれ友達なんだぜ~、うらやましいだろ~」みたいなものがないのでおいらは好きだ。これが○○氏による△△の話だったりするとなんというか自慢話みたいに聞こえてねえ・・・。

内容はいままでさんざん語られたことの焼き直し・・・ではありません。初めて知るようなことがたくさんある。ひとつあげると、1stアルバムを作るときにプロデューサーでドラマーのボビー・コロンビーはハービーとチック両方にオファーした。チックは飛行機に乗る前に「ボビー・コロンビーのアルバムに参加するってことでいいんだよね?」ときいてきた。ボビーがフロリダの新人ベーシストのアルバムだと説明するとチックは丁重に断ったそうだ。もうひとつ。ラリー・カールトンの”ROOM 335”は最初はカールトン、ミシェル・コロンビエー、ジャコ、スティーブ・ガッドで録音されたけど契約の関係で陽の目をみなかった。どうですか?これだけでも読みたくなったでしょ。てか、それを聴いてみたい!

しかしながら「注」がひどい。文中にでてきた単語についてページ下部分に説明が書かれているのだけど、「ビートルズ」「マイルス・デイヴィス」「ストラヴィンスキー」「デューク・エリントン」などまで説明されるとやりすぎの感がある。ビートルズの説明文は「60年代に世界を席巻した史上最も成功したロックバンド」だよ。ひどいでしょ。あと、小さくて見えないライブ風景写真のせたりとかも無意味。わるいけどこの部分は完全に自己満足だね。

あと、よくいわれることだけど記述にまちがいはあるね。

“PORTRAIT OF TRACY”での最後の高音部分はオーバーダビングと書いてあるけど普通にできます。知り合いのベーシストから見せてもらったことがあるので。ちょっと練習はしたけどおいらがやっても出せた。当時はジャコも「オーバーダブなんかクソだ」といってなるべくやらなかったそうだしね。1stアルバムに収録されている”KURU – SPEAK LIKE A CHILD”もオーバーダビングしていないそうですよ。
多くの著名人がコメントを寄せている「ジャコを語る」の章でのジミー・ペイジがふるっている。「1985年にジャコがライブをしているところにいったら名前を呼ばれて一緒に歌ったけどお互いハイになっていたからよく覚えてない」。こんなコメントのっけるなよw 説明文は予想通り「三大ギタリストのひとり」w まあハイじゃなくてもロックのギタリストが85年のジャコを見ても何も感じなかったとおもうけどね。

それから、以前も似たようなことを話したかもしれないけど、やっぱり本にもありましたよ。ジョニ・ミッチェルのコメント。
「私の思った通りやってくれた」「わたしとまったく同じ考えだった」とかの連発。うそつけw

それに比べてマーカスのコメントはウソ偽りのないすばらしいものだった。少し違うかもしれないけど、だいたいこんな感じ。
「初めて聴いたときはよくわからなかった。ジャズもくわしくなかったし。スタンリー・クラークとかラリー・グラハムみたいな飛んだり跳ねたりが好きだったから。1年くらい後になってすごいのがわかったけど。ドナ・リーは一発でやってるんだろうなとおもっていたけど、自分でレコードにあわせてベースライン弾いたらちゃんとやっているのがわかって驚いた。自分は結局ファンクがあっているとおもってそっちにいったけどジャコを学んだのはすごく役に立ったとおもう。」

まあジャズ系のコメントはおもしろくて長いんだけど、ロック系のコメントは短くて「貢献したとおもう」とか「彼は偉大だ」とかそんなことばかりなんだよね。ホントにわかってるのかと疑いたくなったよ。




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