2017年7月11日火曜日

“JACO PASTRIOUS”



 
“JACO PASTRIOUS”

超、超名盤で、大好きなアルバムなので、今回は長くなります。記憶では、今まで一番長かったのは「ボサノヴァ詞大全」に対する不満の巻、のときだったかw


いわずとしれた、まさに伝説的なジャコのデビュー盤。ベーシストのリーダー作としてはいまだにこれを超えるアルバムはつくられていないし、これからもないだろう。いろんなところで高評価の文章を読むので、いまさらおいらがホメたところでもう何の足しにもならないだろう。なので、あえて逆のことをいってみる。いまでは最高のアルバムだとおもっているおいらが、このアルバムを初めて聴いたときの感想だ。青っちろさを笑ってくれたまへ。

よく「冒頭のドナ・リーにぶっ飛んだ」と聞くけど、予備知識なしで聴くとたしかにぶっ飛ぶのだろう。おいらの場合は「ドナ・リーにぶっ飛んだ」というウワサを知ってから聴いたので正直言って「へ?」という感じだった。普通に4ビートでやって欲しかったのというのが本音。ポコポコいってるコンガだけバックにしてハーモニーも希薄でしかも疾走感のないインツーでやられてもねえ。そりゃ技術的にはすごいんだろうけどさ。ゴージャスな演奏を想像していたからさあ。

念のためいうと、ダメというわけではなくガッカリしたのだ。ジャズ界3大ガッカリのひとつだよ(ちなみにあとはジミー・ローゼンバーグのチェロキー。もうひとつは・・・)。アルバムの評価は5つ星なんだけどドナ・リーにがっかりしたのは事実。 

”DONNA LEE”が終わると間髪入れずに始まる”COME ON, COME OVER”はあまりにジャズじゃなさすぎるので違和感があった。当然いまではすべてがかっこいいとおもうしサンボーン、ハービー、マイケルのソロも「く~、たまらん!」だ。勢いがあり一番わかりやすい曲だけど、中山康樹が「2曲目でほっと一息ついてあとは一気にたたみかける」みたいな感想をどこかで書いていて、「この曲をブレイクととらえるとはすごいひとだなあ」と感心した記憶がある。

3曲目”CONTINUUM”はまず編成が不思議と感じた。じつはこのアルバムを聴いたころはほとんどフュージョンを知らなかったので(毒されていなかったのでw)、曲ごとにスタイルもメンバーも全然ちがうということに、これまたかなり戸惑った。”CONTINUUM”は(あたりまえだが)ベースがメロディをやっているのでベースパートがいないことに違和感があった。もう、普通のジャズの耳で聴くとホント違和感だらけ。ピアノトリオみたいな編成なのに普通のバップでベースがリフやるときの雰囲気ともあきらかにちがうし、キーボードもドラムも最初から最後までまったくの脇役だし曲もなんだかよくわからないし、なぜか漱石の「それから」の最後につづく光景を連想してしまったのだ。電車にのってまわるまわる・・・って。
当然いまではものすごく素晴らしいとおもっている。繰り返すけど、今話しているのは初めて聴いたときの感想ですから。この雰囲気はなかなかだせないね。ビッグバンド結成後もやっていてかっこいい編曲もされているけど、初演のこれがダントツにいい。アメリカの1976年を切り取ったかのようだ。

次の曲は”KURU – SPEAK LIKE A CHILD”だ。ハービーの初演ではテーマがよくわからなかったあの曲がこんなにポップでわかりやすくなるとはただただ驚いた。おいらはここで初めて、延々と繰り返される16分音符のベースパターンというものを聴いたんだけど、なんというか、とにかく気になった。いままで聴いてきたジャズではこういうのはなかったからなんとも評価しようがなかった。背伸びしすぎたかなと少し後悔みたいなものが沸き起こった。まだおいらにはフュージョンは早かったか、と・・・

次が超名曲!”PORTRAIT OF TRACY”。これもねえ、こんなにハーモニクスを聴かせるような曲はいままでなかったし途中の不協和音と曲全体の静けさがなんともいえず、いいのかわるいのか意味不明だったんだ。フュージョンファンからは「初めて聴いたときにあれの良さがわからないとは、未熟者め!」と怒られそうだが。技術的にすごいのだろうけどどのくらいすごいのか想像つかなかった。アドリブがないからジャズじゃない・・・などと思った記憶がある。ははは。もうボロクソ評価だよねw

”OPUS POCUS”はテーマリフがないしゆっくりなテンポだし他の曲とちがって決定打がないように感じたけど、ウェインがとにかく素晴らしいなとおもった。でもコードチェンジが複雑じゃないから手抜きみたいにも感じた。でもなんかここでほっとしてしまった。次の”OKONKOLE Y TROMPA”がまたさらにわけわからない曲で、コードがあるのかないのか、だいいち何拍子なんだ?延々と同じパターンでベースラインでもないし・・・意味不明。曲名も意味不明。このアルバム買ってよかったのだろうか・・・と不安になった。だいぶあとで超絶技巧に気づいたね。

次の”(USED TO BE A)CHA -CHA”でやっと一番ジャズらしい曲がでてきて感激した。これだよ、こういうのをずっと待っていたんだよ、と。テーマ→アドリブ→テーマという展開の曲がなかったからねえ。ジャコのソロも一番ジャズらしいし。ピッコロ、ピアノとソロをまわしていくことが新鮮に感じた。”CONTINUUM”でのソロはあの曲でしかできないソロだったから、ジャズの土俵で演奏しているソロだなあと。ところで、ヒューバート・ロウズのピッコロがものすごくかっこよくておいらもピッコロやりたいなと真剣に思った。やらなかったけど。でもしばらくヒューバートの演奏ばかり集めていた。クインシーのところで数小節だけ吹いてるやつとかもあつめてカセットテープにいれたりして。

最後の曲”FORGOTTEN LOVE”はベース不参加でアレンジを聴かせる曲。周囲に対してかっこつけるならこれも素晴らしいというべきだろうけど、さすがにこれははっきりいってつまらんからいつも聴いてないw 

ところで10年以上前に「+2」として追加曲収録してCDで再発されたけど、追加曲がなかったとしても音がすごくクリアになってジャコだけでなくいろんな楽器がはっきり聞こえるので「買い」だとおもう。


ということで、当初は背伸びしすぎてフュージョンはわからんわ、と思っていたおいらが、今では自他共に認める「仲間内で最も熊谷師匠に近いレベル」と評価されるようになるとは、このときには予想もできなかったw



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