2013年12月14日土曜日

選曲センスは重要です


どの地方にも大御所と呼ばれる人がいるだろう。「昔、プロだった」とか「昔シャープにいた(電器屋じゃないぞ)」とか、おいらの知ってる中に「進駐軍に出入りしていた」という人もいる。

もっとも、今の若い人にはシャープとかいってもわからない人が多いし、ありがたみもないんだろうね。

大御所の人たちは、さすがに10代から現在のご老境に至るまでずっと演奏生活だったから、とにかくプレイがすばらしい人がほとんど。例外もいますけど。

まだまだテンポがよれる若手ドラマーが多いなか、大御所クラスの安定感はたいしたもんだ。共演者が、どんなに初心者で、自分の音に対しても耳栓しているような人やアルバート・アイラーの生まれ変わりみたいな人、はたまた天衣無縫な、常識にとらわれずに好きなときに好きなだけリタルダントとフェルマータを繰り返している人、ジョアン・ジルベルトの信奉者のように曲のサイズを自由に変更する人がきても、決して破綻させずに演奏を終わらせることができる。

ただ、ここまで持ち上げておいてなんだけど、大御所には弱点があるのです。

コーヒー一杯でジャズ喫茶でずっとねばっていたという時代、レコードが高価で貴重だった時代のせいもあるし、毎日演奏でヒマがなかったせいもあるんだろうけど、現代の若手より楽曲を知らないことが多い。で、楽曲を知らないことにより選曲センスが壊滅的になっていることが多い。これは本人はまったく気付いていないけど、かなり痛いことなのだ。
あ、これは「統計的に」ということだから、大御所のあなた、必ずしもあなたのことをいっているわけではないので。

ライブの選曲をしているときに、大御所からラストナンバー案として「bags’ groove」とか要望を出されると、一瞬耳を疑うね。選曲センスのアルマゲドンだ。

友人Qからきいた話はもっとすごいよ。

Qが大御所ベーシストと演奏の仕事をすることになった。どうやらパーティではなく、文字どおりの宴会場での宴会らしい。さらに、冒頭からでなく盛り上がったところで登場するということだったそうなんだな。

Qはすでにその時点で嫌な予感がしていたとのこと。

宴会場の外で待機していると、早いうちから酔っ払ってかなり場が盛り上がっていることがよくわかる。いよいよ出番となったとき、大御所ベーシストがいった。

「じゃあ、まずはボクのソロで『あなたは恋を知らない』をやるから」

宴会の幹事が「それでは、本日はジャズバンドをお招きしております。よろしくお願いしま~す」と紹介して盛大な拍手をもらったあと、宴席で、ロン・カーターばりの「顰蹙買いマス」という看板でも掲げたような、くら~いバラードが演奏されたのだった。

Qいわく「客の、酔いがさめていくのがよくわかったよ。ほら、なんてったって1曲目はベースのソロナンバーで、オレはただ立っていただけだからさ、客を観察してたからね。」

選曲センスは重要ですよねえ。




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