いままでブルーノートのヒストリー本はいくつか読んだけどこの本が一番だとおもう。小川隆夫さんの文章はBNのコンプリーターを目指していただけあって愛情あふれていて好感がもてるし、アルフレッド・ライオンのインタビューをふんだんに引用にしてあるところが他の本と大きくちがう点だ。インタビューのときはライオンが呼んだレナード・フェザーも一緒にいたそうだ。聞き手は著者と、油井正一氏、行方均氏、中山康樹氏。こうきくと日本ジャズファンとしてはなんとなくすごいと感じてしまう。
66年に健康状態の悪化を理由にリバティへBNを売却したライオンだが、メキシコへ移住したのでほとんどの人間が彼はすでに死んだとおもっていたそうだ。ところが84年のブルーノート再出発ライブのためのリハーサルスタジオへライオン本人が現れた。ここからが笑えるんだけど、一番最初にライオンに気付いたのはロン・カーター。
「あなたはひょっとして世界でもっとも偉大なプロデューサーではないですか?」と言ったそうだ。さすが大先生、あいかわらずまわりくどい。60年代にさんざん一緒に仕事したにもかかわらずこの言い方だ。ある意味すごい。
「そういう君はひょっとして世界でもっとも偉大なベーシストではないかい?」とでも言われたかったのだろうか。この部分だけでも読む価値がある。3500円は高くないw
いろいろなところで書かれているBNヒストリーだけど何度読んでもおもしろい。ジャズの歴史のかなりの部分を網羅してあるしね。黒人音楽やブルースに惹かれていたライオンが、スイング全盛期に白人ビッグ・バンドに興味を示さなかったというのはいかにもBNらしいよね。
ライオンだけでなくいろいろなミュージシャンの証言がたくさんでてくる。アート・ブレイキーとホレス・シルバーの仲たがいの真相とか(詳しくは書きませんがいままでの定説が覆りました。どうせ本読まないから教えてくれというひとがいたらコメントいれてください)、クール・ストラッティンのジャケットの女性が誰だとか、ファンにはたまらんです。いや、女性が誰か興味あるのは、ファンどころか相当のマニアだな。
オルガンにレスリー・スピーカーつなげたのってジミー・スミスのアイデアだとか、いやー、おもしろい。読んでいてライオンの慧眼ぶりに脱帽することばかりだけど、彼の一番の慧眼はロンのリーダー作を作らなかったことだね。やはり「偉大なプロデューサー」だわ。
それにしても、大変よくできた本で必読であるとおもいます。読み終わった時感動でじーんときました。著者に心から感謝したいです。
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