2015年3月2日月曜日

油井正一さんについて



油井正一さんの文章はおもしろい。ジャズに対する愛情が伝わってくるし、いいものはいいわるいものはわるいと感情を抜きにちゃんといえるからだ。あたりさわりのないことを書いてとりあえずほめるとか、自分の好みだけで音楽性を批判する昨今の評論家とはちがう。
というか、油井さんと比べると他の評論家(と呼ばれる人たち)はただのファンの域からでていない。昭和ひとケタのころからすでにジャズ評論をしていた世代にもかかわらず、ジャズの変革を拒絶せずに柔軟に受け入れ、ジャズファンに多くの情報を発信していた姿勢には頭が下がる。「売れるわけないと思っていたが案の定売れなかった」とか「エリントンの○○組曲はSP4面だからひっくり返してまたひっくり返してさらにひっくり返してが面倒くさい」とか「グッドマンの全盛期は本当にすごかったが、来日時の演奏にはがっかりした。だから著書の改訂の際にグッドマン批判を3ページ追加した」など、こんなことがいえるのは油井さんしかいない。本業の評論で比較をしたら外国の批評家にも大差をつけて(競争じゃないけどね)トップになるだろう。パナシエ、ドゥローネー、フェザー、オデールも油井さんの前ではかすんでしまう。
油井さんの著書はたくさんあるがこれはものすごくオススメです↓

油井正一 「ジャズの歴史物語」

72年に出版されたもので、入門書ではないです。ある程度知っている人向けかなと思う。ジャズ発祥からフリーまでを前期・中期・後期に分けて語っているのだけど、やはりというかさすがというか、歴史を延々とならべるという内容ではないです(そういう本ってあるよね)。値段以上の価値がある本、絶版になるまえに購入すべき必読本ですよ。



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