2014年3月13日木曜日

実力もなく性格も素行わるかったひとの話



修行時代は文字通り修行のためになるべく何でもやるようにしたものです。
どこの世界にもいるんだろうけど、性格が曲がっていて嫌われ者というミュージシャンがいて、でもそういうひとたちとも機会があれば演奏するようにしていた(もうたくさん、いまではしないけどね)。

さて、昔のはなし。
実力はないくせに歳とってるだけでいばっているというアルトのおじさんがいた。Uさんという。おいらもひどい言い様だね・・・
小さな店でときどき行われていたジャムセッションを仕切っていたのだけど、Uさんの性格のせいで参加者はほとんどいなかった。ある日仕事が早く終わったのでピアノのI君とそのジャムセッションに行ってみた。客は若者3人くらいか。セッションのホストであるUさんが演奏していた。ドラムの若者が加わることになると、U氏は「このオレは信頼できるリズムセクションとしからやらない」といって演奏から抜けた。それほどのミュージシャンでもないのに。
おいらが参加する番になると「よくわからんやつにオレのリズムセクションは伴奏させない」といってホストのピアノ、ベース、ドラムを引き揚げさせた。うーん、それならこのホストはなんのためにいるんだろう。あほすぎる。ジャムセッションのホストというものをまったく理解していない。

後日、別の店でU氏が演奏するときに、トラでおいらが入った。引き受け手がいなくてまわりに回っておいらのことろにきた話で、当然イヤだったが修行のために引き受けたのだ。

当日のリハーサルのとき、おいらとしては「参加してやってる」という気持ちだったんだけど、逆に向こうは明らかに「やらせてやっている」という態度だった。まあ当時のおいらは若造だし仕方ないか。
おそらくいつも同じ曲をやっているのだろう。ほかのメンバーはみんな慣れた感じでニヤニヤしながらおいらを交えて軽く演奏した。何かの曲でベースの男が「この曲はギターでかっこいいイントロだしてくれ」といった。するとU氏がにやけながら、
「おいおい、そんな無理な注文つけるなよぉ?」と馬鹿にしたように答えた。
ベース氏も「そりゃそうか。ははは」といいバンド全体がおいらを見下すような雰囲気になった。どうですか、これ。

本番がはじまり、セット間の休憩のときU氏が店の一か月のライブスケジュールのチラシを手に取ってながめていた。そしておもむろに、
「こいつダメ、こいつも全然ダメ。なんだこいつ?知らねえな。こいつもドヘタ」
などといって書かれている出演者の名前をボールペンでハネだした。
そして最後に、
「なーんだ。みんなダメじゃん」とのたまわった。

(すくなくともあんたよりはマシだ)とおもったがおいらはだまっていた。
それにしてもなんという自信。無知というのは恐ろしい。自分がすぐれたミュージシャンだと信じているのだろう。メンバーたちもそれをみて笑っている。
はっきりいうとヘタなのはU氏だけではなくベースもドラムもピアノも全然ダメだった。修行時代のおいらですらそう思った。こうはなりたくないとおもったね。

こんなU氏であるから、客などはほとんど入らなかった。何度か手伝ったがいつもそうだった。何度も手伝うおいらもバカだねえ。
しかし時々くる陰気な男がいて音楽を聴いているようにも見えず、1セットが終わるといつも帰っていた。その男が来るとU氏は休憩のときとなりに座ってぼそぼそ話していた。友達なのかなと思っていたが、じつはその男はU氏にクスリを売りに来てる売人だったのだ。うーん、こわい。現代でもそんなひといるんですね。
 
 

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