60年代後半からのフリージャズのブームは楽器演奏が未熟なものですらミュージシャンと名乗ることができ、アマチュアの世界でも多くのニセモノ・ジャズミュージシャンが出現した。
ではフリーではなくモダンジャズならニセモノはいないかというとそうでもない。「10代の頃に吹奏楽をやっていて、なんとなく流されるようにジャズをやるようになったけれど、じつはジャズなどほとんど聴いたことがない」というアマチュア・プレイヤーも多い。
彼らは真剣にジャズをやろうという考えがない(そもそもそういう考えが理解できない)からコードについてもよくわかっていない。機能コードを理解していないので度数(Ⅱm7とか)で言ったりドミナントとかいっても話が通じない。じゃあどうやってアドリブするのかというと、おいらもその方面はくわしくないけど「マイナーペンタ一発」とか「ブルーススケール」とか「なんとなく雰囲気で適当に」とかいくつかスタイルがあるようだw 唄い方として否定はしないけど、ハーモニーの流れをフレーズで表現するのがモダンジャズのアドリブの根幹であるわけで、毎度毎度コードチェンジを無視した演奏(それしかできない)はジャズではないといえる。
ジャズを好きで普段から聴いていればこのようなプレイはできないとおもう。もちろんホリゾンタルな演奏がダメというわけではないが、フレーズにヴァーティカルな感覚があるからモダンジャズと呼ばれるのだとおもう。コード無視のワンスケールなら他のジャンルとかわらない。本多俊夫氏が「アドリブではなくヴァリエーション」と言ったのは言い得て妙。
この系統のトランペッターにたとえば「好きなミュージシャンは?」と聞くとずいぶん考えてから「メイナード・ファーガソンとか」と答える。もちろんファーガソンは素晴らしいプレイヤーだがコンボでトランペットをやっている人間が真っ先に挙げるのは少しちがうとおもう。「マイルス・デイヴィスとかどう?」ときくと少しムキになって「デイヴィスさんは聴いたことありますよ!」などとトンチンカンな返答がくる。ジャズやっていてマイルスを「聴いたことがある」などというヤツはいないw さらに「デイヴィスさん」である。ジャズやってる人間なら「マイルス」、古い人なら「デビス」と呼ぶ。そして「クリフォード・ブラウンは?」とさらに聞くと「クリ?なに?もう一度いって」とくる。信じられないかもしれないがそういうジャズ・ミュージシャンもどきは多い。
さらにいうと、ジャズを聴いてないからあたりまえのスタンダードがわからない。モーニンすらわからない。実際にあった話だけど、あるリハーサルで”SO WHAT”をやることになったがトランペットが「おれ知らない」という。「楽譜をくれ」というからその場で書いて(シンプルな『ターラッ』ってやつだけね)渡した。テーマ終わってテナーサックスのソロになったがその後ろでトランペットがずっと「ターラッ」とやっている。「なんでソロのバックでリフやってるの?毎コーラスやれって書いてある?」と不機嫌にきいたら「毎コーラスやれとは書いてないがやるなとも書いてない」という。じゃああんたは枯葉でも酒バラでも延々とリフ繰り返すんかいとおもったわ。
そのリハーサルが終わるころに「やっぱりSO WHATじゃなくてインプレッションズにするか」という話になってやろうとしたら例のトランペットが「おれ知らない」と。まあそうだろうなと思いながらもめんどくさいから「SO WHATと同じ進行だから」と言ってせーのではじめたらやはりインプレッションズのリフのバックで「ターラッ・・・」と鳴っていた。
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