2015年6月21日日曜日
ゲッツ/ジルベルト#2
このアルバムは、いろんな意味でおもしろい。いろんな意味で。
ヴァーヴは前作のヒット再来を狙ったのだろう。64年のカーネギーホールのライブ盤なんだけど、A面5曲はゲッツのグループ、B面5曲はジョアンのグループという内容。
ゲッツのほうはバートン入りのカルテットで、曲もすでにボサノヴァから離れている。前作のような雰囲気はまったくない。ジョアンのほうはトリオ演奏、それはそれでわるくないのだけど、ゲッツとの共演はない。ジョアンは、例の尺を伸び縮みさせることはまだやっていないけど、センスのわるい、遅らせるだけのフェイクが鼻につく。はっきりいうがかっこわるい。
この時点で、レコードを買ったひとはだまされたと思うのではないだろうか。裏ジャケットにもそのような記載はないから、ビニールで封をしている状態では店頭でも確認できなかったと思う。共演がないのに、よくもまあ「#2」なんてタイトルで発売できたと思う。詐欺である。
まるで「マイルス&モンク・アット・ニューポート」の再来だが、 ライブ自体は同日であるだけ救いだろうか。
まあ、この時点でこのアルバムの胡散臭さがよくわかると思うけど、もっとおもしろいのはCDになって追加された5曲。2曲がアストラッドとゲッツの共演、3曲はさらにジョアンとの共演なのだ。
「なんだ、共演録音があるなら最初からこれを発売すればよかったのに」と思うが、聴いてみると発表できなかったのがよくわかる。
ちなみに追加曲は最初から編集していないから、 ゲッツの曲名ミスのMCとか(わざとか?)ジョアンがセッティングしている最中のガサゴソいう音が延々と入っている。CDのプロデューサーもけっこうやっつけている感じだ。
で、アストラッドの歌。スタジオの前作より音痴度合が増している。まあおいらはアストラッドの歌は好きだからかまわない。ここで歌われている「オンリー・トラスト・ユア・ハート」、20年前のポリドールのヴァーヴカタログでは「この曲が聴けるのは、『オー・ゴー・ゴー』だけ」なんて書いてあったけど、ウソになってしまったね。
ジョアンが参加すると、ジョアンはテキトーに曲を始めるので、リズム隊はいつも数小節遅れて入ってくるんだけど、それがライブ自体のいい加減さを物語っている。そういうスポンテニアスなものはジャムセッションだけでいい。
イパネマはとにかくアストラッドが走る走る。ゲッツのソロ後のラストテーマでも走る。すごく気になる。ドラマーはだれだ?ジョー・ハントだろうか、ずっと8ビートのオフで叩いているのが悲しくなる。
そしてファンの間では有名な、ラストの「ヴォセ・イ・エウ」。 ジョアンのサイズと他のメンバーのサイズが違っていて、ゲッツのソロのバックではずれたコードが延々と続く。絶対に聴いていてわかったはずなのに、ゲッツもジョアンも合せようとしない。まあ確かに合わせようとしてまたずれるなんてこともあるからどうすべきかはわからないけど(おいらなら相手に合わせる)、この二人あえて「おまえになんか合わせられるか」と意地を張っていたようにも思える。
ということで、けっこうおもしろいですよ。前作が好きな人はA面のゲッツグループ聴いただけで「全然違う!」と怒りだすかもね。
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