2014年9月25日木曜日

書評:JAZZ LEGENDSダウン・ビート・アンソロジー その1






1930年代から60年間のダウン・ビートの記事の抜粋集。全ジャズファン必読といってもいいくらい。文字数が多いのでかなり読み応えがある。
記者だけでなくミュージシャンも多く寄稿していて、当時の状況をくわしく知ることができる。高い本だけど買うだけの価値があります。

ダウン・ビートはいまのジャズ誌とちがい誰もが歯に衣着せぬ批評や批判をしていて、それが売れるひとつの要因になったのだなあと思った。考えてみると昔のSJもあたりさわりのないことではなく、いいにくいことをはっきりと書いていたのでおもしろかった。
広告主に気を遣っていいことしか書かないレビューと、本人から金をもらって書いているかのような新人紹介、ミュージシャンのインタビューも「いまのバンドは最高」「メンバーみんな最高」というおもしろくもない記事ばかりという現代の状況とはまったくちがう。ジャズに対する愛情を感じます。

おいらは70年代のフュージョンも含めてジャズが好きなわけだけど、この本では60年代~70年代を「失われた時代」と表現していて、アメリカでもあの電化サウンドはなかったものになっているのか、と驚きました。それに60年代ですら「失われた」と表現しているとは。ある意味60年代はもっともジャズが成熟しているともいえるのに・・・まあバップではなくなっているけどね、でもコルトレーンが活躍してるのは59年のジャイアントステップスから67年、フリー以前に限定するなら64年至上の愛であり、60年代を失われた時代扱いするのはコルトレーンを全否定することにもなるのでは?


ところでいくつかおもしろかった記事をあげると、

・ジェリー・ロール・モートンがW.C.ハンディを「ブルースの親ではなく盗作しただけ」と批判したこととハンディの反論

42年、ジェイ・マクシャンのバンドに在籍していたまだ無名のパーカーは「音数が少ない」と書かれていたこと。

・シャルル・ドローネーの渡米:ドイツ占領下のフランスでの苦労。

17歳のプレヴィンが天才だと絶賛されていること。映画音楽の仕事もしていたらしい。

・評論家もミュージシャンも堂々と他を批判している。ガレスピーもパーカーに反論してるしサッチモはビバップを敵視している。ガレスピーはシアリングをほめているけどトリスターノは「音楽をダメにしている」と切り捨てている。

・人種差別を隠していない。「もう白人のバンドではやらない」とか「バンドに黒人をいれることについての批判」とかがでてくるのはあたりまえ。

以上は1930年代と1940年代の記事より(10年ごとに章がわかれている)いくつかあげた。スイングやデキシーにくわしいひとはもっとちがった記事をおもしろいと感じるかも。

個人的にはビバップの記事が少ないのが残念。それにしても「CHARLIE PARKER WITH STRINGS」って当時から批判されていたんだね。すごくいいレコードだとおもうけど。あそこでのJUST FRIENDSのソロはパーカーのベストのひとつだとおもう。

Charlie Parker With Strings: The Master Takes




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