以前、最低のライナーの話をしたけど、ホント、CDのライナーでひどいものはひどい。半分笑い話だけど、先日紹介した書籍「ジャズ地獄への招待状」の中でも中山康樹氏が共著者の岩浪洋三氏のライナーをからかっている。
岩浪氏のライナーは、最低のライナーのようにミュージシャンをけなしたりはしない。むしろ、一貫せず、とにかくほめているところが特徴だ。「やっぱりケニー・ドリューは渡欧前が最高、渡欧後なんて聴いてられないよ」とBNのアルバムのライナーに書いたと思ったら、スティープルチェイスのアルバムには「さすがドリュー!渡欧してさらにプレイに磨きがかかった」とか書く。おいおいどっちやねん。
と、確かこんな内容だった。記憶を頼りに書いてるから正確には違うかもだけど。
あと、90年代は自慢話だらけのライナーだった。どれを見ても「NYでウィントンとヴィンセント・ハーリングのジャムを聴いた」この話ばかり。いソノてルヲ氏ばりの自慢話だ。
しかし、最大のポイントは「無意味な字数稼ぎ」だね。これは岩浪氏が確立した、ジャズ評論界の必須技術だ。
どういうことかというと、ライナーの途中で「それではここで録音データとメンバーの紹介をしよう」、このフレーズがこれから始まるセレモニーの合図だ。
「トランペット:マイルス・デューイ・ドウェイヴィスⅢ世、テナーサックス:ジョン・ウイリアム・コルトレーン」・・・
え?こっちはそれを知ったうえでアルバム買ってるんですけど?マイルスのアルバムだという理由で買ってるのに、「メンバー紹介、マイルス」はないよなあ。
おまけにフルネームで、ばっちり字数を稼ぐ。これでカネとるの?という仕事ぶりだ。
CDケースの裏とか、ジャケットブックレットの表紙裏にも書いてあるんだよ、録音データも。それをわざわざ文章の中でいうんだから、すごい度胸である。
「執筆時には他の場所にデータが記載されるとは思っていなかった」という理由は不可。それをいうのだとしたら、知らない方がわるい。現場を知らない、まるで評論家みたい。おっと、評論家なんだよな。
1つのアルバムに2つ以上のセッションが入っていたら、それだけで大幅に字数を稼げる。一人でもメンバーの入替があれば、「●月●日のセッションのメンバーは」と、改めて全員を記載するわけだ。
まあ、今ではライナーに期待しなくなったし、買うとしても輸入モノがほとんどになったから、別にいいのだけど、ジャズ初心者を惑わすことはやめてほしい、と現役の評論家にはいいたい。
ところで、以前BNのCDに原文ライナーがつけられたときがあった。最初は期待して読んだけど、アメリカ人が書く原文ライナーもつまらないということがよくわかった。リップサービスの延長で、いかにすばらしいミュージシャンかということを延々と書いているだけ。ただ、レコードの裏に書かれている原文ライナーはいうなれば宣伝文句なわけだから、そうなるのは必然だけどね。
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