かなり前の夏のはなし。まだおいらが駆け出し以前のひよっこのころ、けっこう上手なテナー・サックスのＧさんにリハーサルに誘ってもらった。あまり人と合わせる機会がないころだったから、当日楽しみにスタジオに入った。
Ｇさんほかメンバーはみんな来ていて、すでに練習を開始していた。それはいい。だが、スタジオのなかがとんでもなく臭い。みんなそれに気づいているようだ。気づいていないのはＧさんだけらしい。
いやいや、Ｇさんは気づいていたのだ。演奏中の曲が終わるとおいらに声をかけて、こういった。
「おれ、昨日しこたま飲んでさ、最後はとんこつラーメンにニンニクたっぷり入れて食ったんだよね。息臭いかもしれないけど」
「かも」なくて臭いんですよ。もう、ただでさえスタジオという狭い空間なのに、息を吹く楽器なもんだから、さんざんだったわ。
数年前の冬のはなし。あるイベントで演奏することになりリハーサルのため集まった。9人編成のアンサンブルでおいらにとって5人がはそのとき初顔合わせだった。
順調に曲をこなしていたがふと異臭に気付いた。なんともいえない、鼻が曲がるような悪臭。なんだろう。もしかしてこれは・・・足が蒸れたニオイか？
何気なく見渡してみたらバリトン・サックスの女性がブーツを脱いで演奏していた。足を休めたかったのだろう。しかし、その女性とおいらの距離は５mくらいあるにもかかわらずものすごい臭いがする。ガマンしていたが臭いのせいで集中できない。初対面でいきなり「あの～、靴履いてくれませんか」というのも相手が女性だけに失礼すぎるか、
などと考えていたらベースのひとが「ん？クサいな。なんだろう」と言った。おそらくその人以外はみんな気づいていたらしく誰もそれについてコメントせずに黙っていたらふっと臭いがなくなった。もしやとおもってバリトンの女性をみたらブーツを履いていた。本人も自覚があったのだろうがまさか臭いが拡散するとはおもっていなかったのだろう。
ということで、演奏のときはニンニクを食べない、靴を脱がないようにしましょうというマナーのお話でした。
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