青二才のころの話です。
飲み屋での演奏に少しずつ慣れていったころ、ふらりと入ってきたお客さんが「リクエストはできる?」とたずねてきた。
店のママさんは客商売だから「なんでもどうぞ」という。バンマスは、たいていなんでもできるけど「できるのはできます、できないのはできません」と笑いを誘う回答をする。
おいらはまだ、基本レパートリーを楽譜を見ながら演奏するのに一苦労、(いつものレパートリーをリクエストしてくれるんじゃなきゃ無理だ)と思っていた。
そのお客さんは、あろうことか「テイク・ファイブを」と言った。
おいらは今でこそ変拍子とか拍子がころころ変わる曲は普通に演奏する。オリジナル録音が、テーマだけ変拍子でソロは4拍子、というパターンだったとしても、すべて変拍子のままやるくらいだ。
しかしそのときは4拍子、3拍子以外はやったことがなかった。
バンマスが「テーマはオレがやるから。ソロは一発だからさ」と言ったので、 まあぶっつけでなんとかなるだろうと思っていた。
ところが、5拍子となると、たとえ一発でもどうしてもうまくできない。ちょっとするとすぐずれるのだ。頭の中が3拍子か4拍子にしかならない。もうボロボロだった。
ジャズはアドリブだから、そのフレーズの真意はソロイストにしかわからない。だからアボイドさえ避ければ、変拍子の曲でテキトーにやってサイズが合っていれば聴衆には気付かれない・・・というのはまったくのウソである。もう穴があったら入りたかったよ。
全然ダメだったおいらは、翌日から必死で5拍子の練習を始めたのでした。慣れてしまえばどうってことないんだよね。
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