BILL
EVANS “YOU MUST BELIEVE IN SPRING”
何度聴いても感動する。このアルバムはエヴァンスの、いやすべてのジャズのアルバムのなかでで3本の指に入る名作だとおもう。61年の”WALTZ
FOR DEBBY”でのマイ・フーリッシュ・ハートの最初の一音の緊張感がよいという人がいるが、このアルバムの冒頭のBマイナー・ワルツの最初の1音はそれを凌駕する。確かに好みの問題はあり、「70年代以降のエヴァンスは嫌い」という人もいるかもしれないが。
エディ・ゴメスはエヴァンスに雇ってもらうために自宅の前で座り込みをしたそうだが、60年代にはその恩を仇で返すような駄演(気合いは入っているが空回り、音楽的とは対極。技術的にはすごいかもしれないけど)を連発していた。それらを一発で帳消しにしたアルバムだといえる。当然、いきなりここでのプレイに変化したわけでなく、エヴァンスのコンボの演奏を録音順に聴いていくとそれがわかる。ま、とはいえ、しばらく前まで、まったく録音がみつからない時期(70年~72年くらいか)があり、入手できる音源ではまさにゴメスが「一夜にして変化した」ような印象を受けたものだ。
ここでの美しさは当然ながらゴメスだけの功績ではないしエヴァンスの役割が一番大きいのだけど、他のベーシストではここまで表現できなかっただろうとおもう。あのゴメスにこんなに歌心があったのかと10年前の録音しか知らない人が聴いたら信じられないだろう。あの歌心がゼロどころかマイナスの、ヴァーヴ時代のゴメスしか知らない人なら。
アルバム全体をエヴァンスが支配していてインタープレイじゃないからダメとかいう批判もきくけど、ジャズであるから基本的にインタープレイだろうし、一般世間でいわれる「インタープレイ」ってそんなにいいか?とおもう。ベースが反応すればそれがインタープレイ、目立った反応がなければ否、という間違った解釈があるのではないだろうか。おいらの友人は「ラファロはきっかけみつけるとすぐに動きすぎて、うざい」と言っていたが、同意できる部分もあるしね。
ちなみに、70年代後期以降のゴメスしか知らない人は、ゴメスこそ抒情的なベーシストの最高峰だと思っているだろう。60年代のゴメスを聴いたら、上の場合とは逆にびっくりするだろうなw
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