2014年2月21日金曜日

涙のリクエスト



いまでこそ(スタンダードや有名な曲なら)、リクエストはたいていのものはできる自信がある。

修行時代の青二才のころ・・・・
ある店で演奏していた。ピアノとギターで。客層は酔っぱらいのおっさんが多い店だった。
かなり飲んでいてからまれることもあった。

「おい!オレはなぁ、ジャズなんか知らん!知らんがおまえのはジャズじゃねえ!」

何いってんだおっさん、とも思うけど若造だったので酔っぱらいの言葉でもグサッとくる。
「そうか、おいらの演奏はジャズじゃないのか?でもこのひとジャズを知らないそうだけど・・・」

まれにリクエストがくる。

「何でもいいからサザンの曲やって」
「トルコ行進曲」
「太陽がいっぱい」

すみません、できません。

少しまともなのだと、
「イン・ザ・ムード」
「シング・シング・シング」

うーん、できなくはないとおもうけどおそらくあなたが想像してるものとはちがうものがでてきますよ。編成って言葉知っていますか?

というような感じであった。

ある日、熱心に聴いている目つきのするどいおじさまがいた。
けっこう飲んでいるようだった。
数曲弾いたら近づいてきた。

「鈴懸ひいてみろ」

言わずと知れた有名曲、「鈴懸の径」。しかしモダン専門のピアノは曲名すら知らない。おいらは一度きいたことがあるが当然覚えてない。持っていた楽譜にもない。

「すみません、弾けません」

鈴懸を指定してくるあたりがかなりの通に感じた。
自分が無知であり相手が大きくみえて心の底から謝った。

「おまえらはまだまだという感じだ。鈴懸を弾かせればレベルがわかる」
「はい、すみません」
「オレは〇〇でピアノ弾いている△△というもんだ。わからないことがあったらいつでもこい」
「は、はい。ありがとうございます!」

という会話があった。鈴懸を練習しようと心に誓った。そのときは。
男がいった〇〇という店は有名で、知らないひとはいないという店だった。

後日その店に行った。△△氏に挨拶しようかとおもって。
店の若い従業員に尋ねる。

△△さんはいらっしゃいますか?」
「は?誰それ?」
「こちらでピアノを弾いている・・・」
「そんなひといないよ。ピアノは××さんだ」

実際に調べたのだが△△というひとはその店には出ていなかった。


後日、おいらが演奏していた店の従業員から教えてもらった。
「あのひとはいつも酔っぱらってしったかぶって説教するんですよ。楽器なんて弾けないはずですよ」

おーい・・・・

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